髑髏流転
私は気楽なしゃれこうべ
愉快な白いしゃれこうべ
肉のあるときゃ悩みもしたが
今じゃ空っぽ吹き曝し
何の留まることもない
私は気楽なしゃれこうべ
私は綺麗なしゃれこうべ
波打ち際のしゃれこうべ
日ごと夜ごとに波打たれ
月夜は銀に光りだす
おいでヤドカリ 私の眼窩を潜っておくれ
私は綺麗なしゃれこうべ
ある日嵐がやって来て
砂が逆巻く波の中
沖へ沖へと流されて
ビニールからめ鰯の渦へ
ぐるぐる踊る海の泡
なんて愉快なしゃれこうべ
やがて沈んだ海の底
蛸を住まわすしゃれこうべ
肉があっては役には立たぬ
すっからかんのくーらくら
一盃分の安らかさ
蛸を住まわすしゃれこうべ
網にかかったしゃれこうべ
引き上げられるしゃれこうべ
主人の蛸は大慌て
腕をくねらせ逃げて行く
さらばおさらばお達者で
引き上げられるしゃれこうべ
陸にあがったしゃれこうべ
手を合わされてしゃれこうべ
何の因果か気の毒がられ
ぽくぽく登る山寺へ
経に供物に花に水
手を合わされるしゃれこうべ
ずらり並んだしゃれこうべ
珍しくもないしゃれこうべ
今じゃ静かな納骨堂
無縁仏の仲間入り
私は誰のしゃれこうべ
どれが私のしゃれこうべ
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