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June 2010

June 28, 2010

『史的システムとしての資本主義』など


 手元にあるのは岩波現代選書の方だったけど、新版が出てるようですね。
 具体的な歴史叙述はなく、理論的な枠組みをコンパクトにまとめた本。そのため、「あ、いよいよ面白い話になってきた!!」と思うと次の話題に行ってしまう、というのを全編で繰り返すことに。もっと面白い話が読みたければ大著の方に手を出せということか……
 訳者あとがきの最後のページに、ふと見たような文字で古い日付が書き込まれていました。
 11 avril '85
 てっきりダンナが買った本だと思ってたけど、どうやら亡き父の蔵書だったようです。読み終わると日付書き込んでたんですよね、あの人。こんな面白い本に出会えてたんだなぁ、良かったなぁ、と。四半世紀を経て、不思議な邂逅です。

 あと、NHKでやってた「ハーバード白熱教室」をちょくちょく見てたんですが、これも面白かった。正義とは、善とは、倫理とは、というようなテーマで、身近な実例にかんして学生の意見を聞くかたちで授業を進めていきます。さすがというか、学生たちの受け答えもはきはきと論理的。反対意見を募ってもすぐに手が上がる。マイケル・サンデル教授は対立点をメタ化したりフレームワークをずらしたり、みごとな船頭っぷりです。ロールズの前段としては、ほとんどアリストテレスとカントぐらいしか扱ってないんだけど、しっかり政治哲学してる。
 最終回もなかなか感動的だったんですけど、私は何とも言えない「鼻持ちならなさ」も感じました。さあこれでハーバード卒業生として恥ずかしくない議論の土台を身につけられただろう?これが正しい議論の枠組みでありルールだよ、みたいな。知的誠実さとは別種の、サービス産業としての商品性の高さ。
 それでウォーラーステインをぱらぱらと読み返してみると、こんな記述がありました。


 普遍主義の基本は、……世界にかんして普遍的かつ恒久的に正しい、何か意味のある一般論が出来るという信念にある。さらに言えば、すべてのいわゆる主観的な要素を--つまりすべての歴史的に制約された要素を--排除したかたちで、一般的公式を追い求めるのが科学の目的だとする立場である。
 普遍主義への信奉こそは、史的システムとしての資本主義が組み上げたイデオロギーのアーチの頂点に置かれた要の石であった。……このイデオロギーの製造工場となり、この信仰の神殿となったのが大学であった。ハーヴァード大学はその紋章を「真理veritas」という言葉で飾っている。一方では、絶対的真理などというものは決して知りえないのだとつねに言われており、このことこそが近代科学を中世の神学から区別するゆえんだとされながら、他方では、真理の探究こそが大学の存在理由であり、もっと広くいうと、すべての知的活動の存在理由なのだとも、たえず主張し続けられてきたのである。……アメリカで市民的自由を政治的に正当化するために好んで用いられてきた論法は、「思想を自由に交換できる場」が保証され、その場を利用して交流が行われた結果としてでなければ、真理などというものは認識できないのだ、というものである。

 ハーバード的真理以外を真理から除外しておきながら、イスラムと対話するための土台というスキルを提供しちゃってる感じがしたのかも知れないですね。とてもためになる、いい授業でしたが。

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June 15, 2010

もうひとつの『アフリカの日々』

 例の1Q84で引用されたとかで、ちょっと注目集まっちゃうのかなと思われるイサク・ディネセンですが、まぁ『アフリカの日々』はどうせ映画にもなっちゃってるし。

 その『アフリカの日々』の中でも印象的な登場人物、料理人の少年カマンテが、すっかりお祖父ちゃんになってから語った聞き書きと、カマンテによるアフリカンアートな絵や、さまざまな写真をまとめた大判本。

 こんな本出てたの知らなかったんですが、マーケットプレイスで安く入手できました。
 ファンにはたまらない一冊ですが、よく日本語訳なんて出版されたなぁ、と。

 魂の深いところで生きている人の言葉。

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