湖の魔女
銀のネジ 金の歯車 音もなく ラピスラズリの 天球回す
とても美しい、けれど作り物の夜空の下に、一人の魔女が閉じこめられていました。
魔女は終わりのない夜の中で、出口を探し続けていました。
森の奥 湖水を滑る魔女の杖 飛沫よ歌え 夜の秘密を
魔女の杖で波立った湖面から、銀色のしぶきが舞い上がり、かすかな歌が響きました。
静寂の水面揺らすは 愚かなり 己を知らぬ 湖の魔女
湖は魔女に答えてはくれません。
魔女はがっくりとうなだれ、更に森の奥深くさまよいました。
森の深くには苔むした一つの井戸がありました。
石を投げ 遠く水音 聴きながら 井戸なお深く 汲む物もなし
沈めるべきが石ころでないことは、魔女にも分かりはじめていました。
水底へ 波音一つ立てぬよう 波紋一つも残さぬように
魔女は自らを沈め、真理を浮かび上がらせる以外、何も出来はしないのです。
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