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March 11, 2005

イケズの構造

 土日に会ったMくんが置いてった『イケズの構造』。こんな恐ろしい本を読んだのは、『ホット・ゾーン』以来かもしれない。
 何が恐ろしいって、日本語で書いてあるかのような文章なのに、この本自体が京都弁の思考に貫かれているせいで、随所で理解不能な壁にぶち当たる。
 曰く、イケズは陰険ではない、陰険は裏表があるが、イケズは正面から堂々と、ただし微笑みつつ、万力のような握力で握りつぶす。……その微笑みが既に陰険なんですけど。
 曰く、イケズは意地悪でもない、滑稽なものを揶揄する方法論ではあっても、嗤うことを目的に人を貶めたりはしない、受け身のもの。……人の滑稽さを揶揄するのが意地悪じゃないって、すっごい論理。

 そして「ぶぶづけ」より恐い「コーヒーの勧め」。
 a.「コーヒーのまはりますか」→意味のない挨拶なので、コーヒーが出てくることはない。頃合いを見てお暇しましょう。
 b.「そない急かんでもコーヒーなと一杯あがっておいきやす」→これも挨拶なので遠慮しなければいけない。しかも、なんでですのん、よろしやん、コーヒーお嫌いやったら紅茶にしまひょか、もう淹れかけてまっさかい、な、などと執拗に勧められても、あくまで固辞しなければならない。
 c.「喉渇きましたなあ。コーヒーでもどないです」→さっさと帰って下さい、の意。「喉渇きましたな」の部分が、疲れを強調して撤収を促すメッセージであると気付かねばならない!ひぃ~っ!
 d.「コーヒーでよろしか」→唯一誘いに乗っても良い。何が運ばれてきても感謝して粛々と飲み干してから退散すべし。

 著者は平安時代の宮中に起源を持つイケズを、洗練された言葉遊び、精神的余裕、と解釈して擁護しているが、むしろアルカイックなメンタリティに近いよなぁと思う。不運やばつの悪さを嗤うことが大好きなのって、部族社会が生きている土地で多いでしょ。京都もある意味、京都人という部族が洛中に蠢くアルカイックな社会なのかも。自他の不運や愚かさを嗤う文化自体は、けっこう好きだと思う。でも、この本に出てくる数々のイケズの実例には、背筋がゾゾーッと寒くなる。

 ちょっと落ち込んだのは、この本を読んでから、自分のブログを何気なく読み返してみると、「えっ、これってもしかしてイケズ?」と思う記述が随所に。私はキツいこと言うだけだと思ってたけど、その言い方が結構イケズな時があるのかも……。イヤ~ン、な感じ。

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Comments

 やんわりした「京ことば」に何代もにわたって(俗に九代)、なめされて京都人になっていくのかも・・・。

Posted by: winter-cosmos | March 12, 2005 at 10:47

「よそさん」には、京ことばの行間なんど、想像がつきません……。
でも、この本の著者、観光地京都を闊歩するよそさんを脅かして威嚇して面白がってはると思いますよ。京都ではコネがないとお能のチケットが取れない、なんて書いてありますけど、そんなこと、今どきありませんもんねぇ。

Posted by: らら美@知恵熱 | March 12, 2005 at 12:47

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