Sylvia Plath
京都シネマで『シルヴィア』を見てきた。先月The Fog of Warを見に行ったときに予告編をやってて、すごく見たいけど……一人で見るのは絶対やだなぁ、と思った映画。神戸在住の映画好きの友達にわざわざ来てもらって、一緒に見た。
実在の詩人Sylvia Plathがモデルで、ほぼ実話通りのよう。
二人の詩人が出会って魅かれ合い、大恋愛の末に結婚するのだが……順調に評価されていく夫に対し、書けなくなっていく妻。執筆するはずの時間に次々とケーキを焼きまくるシルヴィア。二人の子供をもうけるのだが、子育てに追われて彼女は疲弊していく。夫を賞賛する人々、「偉大な詩人を夫に持った幸運な女性」呼ばわりされる彼女、「私も詩人なのに!」という叫び。やがて夫の浮気を疑い、自らを追い詰めていく無様な彼女。そしてついに夫に愛人がいることが明らかになり、二人の結婚は破綻する。
夫と別居することでようやく自由になったと語り、再び創作に没頭する彼女だったが、それでも寂しくて寂しくて、小さな理由をつけてはアパートの階下に住む老人を訊ね、わずかなやりとりにすら縋り付く。埋められない虚ろは彼女を蝕んでいく。
もう一度やり直そうとして夫と一夜を過ごすが、彼は愛人が妊娠したことを告げる。そうして彼女は、子供のために翌朝のパンとミルクをトレーに乗せて子供部屋に運び、キッチンに入りドアの隙間にタオルを詰め、ガスオーブンに頭をつっこんで、自殺する。
才能と美貌に恵まれた彼女のような人が、なぜ自らを惨めにするような嫉妬の虜にならなければいけないのだろう? 彼女は、夫を誰かに奪われるんじゃないかという不安のあまり、自分があの女(夫の愛人)を呼び出してしまった、と語る。自らの不安が、一番怖れていたことを実現してしまう――闇から怪物を呼び出すのは、自分自身の不安。
ロダンとカミーユ、光太郎と智恵子。ある種の恋愛から生還することは、女性には難しいのかも知れない。ディネセンはフィンチ・ハットンを事故で失うことによって彼を永遠に手に入れ、恋愛から生還したのだろうか。『サバイビング・ピカソ』で描かれたフランソワーズ・ジローも、タイトル通りの生還者。
天才の愛し方と、天才との別れ方。前者は困難で、後者は更に至難。
対策:生き延びたいなら、早死にしそうな天才を選ぶこと。
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