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February 19, 2005

フェアトレード・イベント

 フェアトレード・イベント「Com~ともに」にいってきました。
 学生中心のフェアトレード普及ネットワークFair Trade Student Networkの主催で、会場には100名以上の若い人たちが集まっていました。民族楽器によるライヴとフェアトレード商品をフィーチャーしたファッションショウ、そしてシンポジウム。若い子ががんばってはいるけど、イベントとしての洗練度はいまいち素人ノリのままですが……まぁ、フェアトレード・コーヒー又は紅茶のワンドリンク付き千円で、楽しめるイベントにはなっていました。会場は旧毎日新聞ビルと言われている三条御幸町の1928ビル3階、Art Complex。
 フェアトレードというのが何かを知らない人に説明するのは面倒なのですが、要するに「買い叩かない」、「適正な価格を支払う」ことで地域の自律を促すことを考えに入れた「公正な貿易」で、単に「可哀相な人に寄付する」のではなく「対等な貿易パートナー」としての関係を作り上げていくことで途上国支援を経済のレールに乗せていこうという運動です。
私も東京に帰るたびに立ち寄っているPeople Treeなどが有名です。
 ファッションショウでは、現地の映像を流しながら、モデルの学生たちがシャツの袖を内側に織り込んでスカートにしたり、フード付きのアウターを上下逆さに着てみたりと、なかなか工夫が見られました。ま、エスニック系の商品が多いので、コーディネイトは難しいものが多いんですけどね、オーガニックコットンのTシャツやセーターなんかは、使い勝手がわりといいと思います。。
 学生ネットワークの方は去年出来たばかりのようです。

 シンポジウムで面白かったのは、マリ出身で精華大で講師をしている人と、やはり精華大の留学生のジャワ島出身の女性が、共に、フェアトレードに非常に懐疑的な意見を表明していた点。
 フェアトレード商品の生産国では、「フェアトレード」という言葉すら、消費国日本以上に、まるで普及していない。誰にとって「公正」なのか、誰にとって「適正な価格」なのか、そもそも、なぜ「貧しい国」があるのか……などなど、問題の射程は広くて深い。フェアトレードが「少しはマシな植民地主義」でないという証明は、まだない、という意見すらありました。
 ことがトレード(貿易)であるだけに、なぜ外貨が必要かと言えばIMFの構造調整プログラムのせいだったりするわけだし、フェア(公正)と言ったって、一部地域で行われる直接貿易である以上、全体の不公正なシステムにインパクトを与えることは出来ないのではないかという疑問もある。また、「顔の見える関係」を先進国が強調するほどには、生産国では消費者の顔が見えていない、という指摘もありました。途上国出身のパネリストの二人は(おそらく金持ちのエリート階級出身だと思うのですが)言いませんでしたが、フェアトレードの生産者にとって、私たち先進国の消費者がどれほど豊かかというのは、見せられるものではないのかもしれません。見せれば、絶望を誘うだけかもしれない貧富の差が、そこにはあるのではないか……。

 市場経済で買い叩かれるばかりの貿易の中では、バナナやコーヒー農家は、小売価格の2%ほどの金額しか受け取っていないと言われています。フェアトレードではその4~5倍の価格で買い取ることになっているそうです。その代わり、小売価格も何割か割高にはなります。

 獲得した外貨で輸入された食料品を買わなければならないとしたら、フェアトレードの意味は薄れてしまいますが、個別のケースとしてみる限りは、おおむね自給経済が成り立った上で、教育費に充てる現金収入が得られるという状態を実現しているようです。

 フェアトレードのような試みを紹介すると、欠点(の可能性)をあげつらって全否定する脊髄反射が必ず現れますが、80円のハンバーガーを実現するために、誰がどのような不利益を被っているのか考える方が先だと思うし、「通常」の貿易が不公正であることが問題なのであって、フェアトレードが問題なわけではないのは明らかです。フェアトレードをスタンダードに押し上げる運動が必要なのであって、けなすことが理に適っているわけではない。善意の寄付にたよるより、ともかくも経済の歯車に乗せた継続的な体勢作りが有利なのは明らかなのですから。
 その上で、伝統技術の継承という理念と、先進国でも売れる商品開発の齟齬の問題を考えなきゃいけないのは事実だし、チャリティを売り物にするがゆえに生産者に甘くなりがちで本当の意味での競争力をつける助けになっていないという批判も、甘んじて受けなければならないのでしょう。

 少なくとも日本では、まだまだフェアトレードの認知は低く、そういうものがあることすら知られていない。悲惨な労働条件の下で学齢期の子供すらが奴隷に近い労働で生産している商品が、百円ショップで売られている。そういう現状に対して、市場経済を否定するのではなく、欺瞞と呼ばれようとも「公正な貿易」「適正な価格」を探っていこうという試みは、私は大好きなタイプの運動です。そもそも、偽善が恐くて先進国住民なんかやってられますかっての。

 パネリストのマリ出身の大学講師が言ってた中で興味深かったのは、マリは綿の生産が多いらしいのですが、綿花の生産には、大量の農薬が投入されているんです。地球上で使われる農薬の数割が、綿花に使われているという。それも、ODAがらみで農家は国策として農薬を買わされているのですが、その講師の人は、「農薬をやめさえすれば、どれだけ農家が楽になるか」と言っていたんです。農薬を買うために現金が必要で、借金する。農薬を使うから土地が痩せる、借金が残る。そういう悪循環から抜け出すには、とにかく農薬をやめることが必要だ、と。彼は、だからフェアトレードというよりも無農薬の農作物を普及することの方が役に立つのではないかという意見でした。ただ、これも盲点はあって、巨大資本が安い労働力を使って無農薬作物を大量生産するということも、現に起こり始めているわけです。
 だからこそ、そうならないための直接取引なんですが……それは全体の不公正な構造を変革する力になるのか? ……難しいところです。

 ちなみに、私が他の市民運動系で見かける顔が、一人として今日は見あたりませんでした。サヨクの人たち、意識低すぎ~。ジュビリーもWTOも、フェアトレードとは関わり深いと思うんですけどねー。

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「経済・政治・国際」カテゴリの記事

Comments

お元気ですか?
コメントに記事をお借りしました。

送り火はご自宅から見られるのでしょうか?あの火を見ると、夏が終わるな・・・とちょっと寂しくなるのですけど、もう毎日暑くって、感傷にふける余裕もなく、秋が待ち遠しいです(^-^;

Posted by: winter-cosmos | August 09, 2005 at 12:29

>winter-cosmosさん
お久しぶりです。毎日暑いですね~。わたくしは京都の暑さを避けて、ただいま東京の実家に来ています。避暑地とはほど遠いけど、京都よりは2度くらい気温が低い日がほとんど。夕方には外に出る気も起こります。
送り火には京都に戻る予定です。自宅からは見えないんですけどね。

Posted by: らら美@東京 | August 09, 2005 at 13:51

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