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January 31, 2005

「無防備地域宣言」学習会

 以前に非暴力で安全保障!その1その2という記事を書きましたが、それと関係あるかな~と思って、「無防備地域宣言」学習会というのに行ってきました。@ラボール京都。講師は大阪経済法科大学の澤野義一先生。主催は「無防備地域をめざす京都府連絡会(準備会)」と「非核平和・戦争非協力都市条例の実現をめざす洛西の会」という……客層も含めて、平和運動にありがちな、若い子が一人もいない、年齢層の高い年季の入った活動家の方々の集まりって感じで。
 でも話の中身は大変ためになる、面白いものでした。以下内容報告。

 無防備地域(non-defended locality)というのは1977年に定められたジュネーブ条約追加第一議定書で規定されている概念で、別に共産国家に占領してもらいたがっている左翼(なんて今でも実在するのか?)が勝手にでっち上げたファンタジーではありません、念のため。
 無防備地域を宣言すると、その地域への一切の武力攻撃が禁止されます。宣言は一方的に行うことができて、相手国には受領義務がある。
 宣言のための条件は以下の4つ。

a) 戦闘要員、移動可能な兵器・軍用設備が撤去されていること
b) 固定の軍用施設・建物がある場合は、敵対目的に使用しないこと
c) 当局又は住民により、敵対行為がなされないこと
d) 軍事行動を支援する活動を行わないこと
 この中で非暴力オタクとして気になるのはc)。この「敵対行為」とは軍事的な敵対行為であって、非暴力的な抵抗・非協力は可能だというのが法学者たちの見解だそうです(自分で調べてないので澤野先生の言によれば、です)。

 国際法による「戦争の違法化」の流れはけっこう進んでるンですね。ジュネーブ条約追加議定書では、住民・民用物と、戦闘員・軍事的目標を区別して、攻撃を軍事目標に限定する義務が定められてるし、文化財・礼拝所への攻撃の禁止、自然環境の保護、ダムや原発への攻撃の禁止、なども定められています。
 ……でも、あれあれ?イラクではモスクも病院も爆撃されてたよねー。って、アメリカ、追加議定書批准してないじゃん。批准したら戦争犯罪で裁かれちゃうもんね。ってか、それを裁く国際刑事裁判所にも参加してないし。さすが国益を守る強いアメリカ。ロシアも中国も、北朝鮮だって批准してるっていうのに。
 日本もやっと去年、追加議定書の批准に漕ぎ着けたばっかだそうです。恥。(外務省の「ジュネーヴ諸条約及び追加議定書の主な内容」のページ

 で、この無防備地域宣言、既に大阪市枚方市で、署名を集めて住民からの直接請求という方法で、条例案が市議会にかけられたそうです。いずれも否決されたそうですが、「リベンジや~! もっぺんヤッたるでぇ~」と一部地域で盛り上がってるそうです。他に藤沢市荒川区でも同様の運動が直接請求に漕ぎ着けたとかって。
 京都でもこれをやってみようと運動を始めてる人たちが、今日の学習会を主催してるわけです。

 有事法制、国民保護法など、ろくな説明もないまま小泉政権がばたばたと実現化し、改憲論も勢いづいているきな臭いこの頃。財界は武器輸出三原則の廃止を求め、「世界で競争に勝つ!」ことを目指してネオリベ路線まっしぐら。財界からの圧力のもと、自己責任の強調によって、これまで築いてきた福祉国家・平和国家としての国のカタチが根本から変容させられようとしています。自己責任で競争を煽り弱者を切り捨て、国民がぼろぼろバラバラになるのを、家族・共同体・愛国心とやらの保守的な価値で無理矢理カバーし、超監視・管理社会にしようというのが、この国のネオリベ政策の両面。
 きょうび四条河原町でビラ捲きしてると、商店街の人とかいうのがすぐにやって来てやめろと言い、するとすぐに警官がワラワラとやって来て取り囲んでやめさせるそうです。三条河原町でも1時間もしないうちに、商店街の人→警官ワラワラというパターンが出来上がっているそう。商店街の人が進んで管理社会に協力するんでしょうね。左翼のビラ捲き、余程うざいんでしょう……ま、それは分かる気もするが、ここは民主国家なので、政治的見解を表明する権利は金科玉条のように大事にすべき筈なんですが。
 ……こういうご時世、地域レヴェルで運動を具体化することにはとても意味があると思います。
 でもねー、運動の看板としては、「無防備地域」ってネーミング、良くないよなぁ。国際法上の用語だから仕方ないんだけど。でも、いかにも受け身でネガティヴ。無防備でいれば攻撃されない保証でもあるのか!って脊髄反射する人、絶対多い。いや、だからぬー、国際法で攻撃が禁止されてるの、って説明を聞いてもらわなきゃならない。それでもきっと、北朝鮮は批准してるのか、中国は、ロシアは、テロ攻撃はどうする、って畳みかけてくるでしょ。だからぬー、テロ攻撃はどっちみち防ぎようがないし、北朝鮮も中国もロシアも批准してて、批准してないのはアメリカ様なのね。

 わたしとしては、市民的防衛・社会的防衛の議論を深めていく上で、国際法的裏付けがあるということが分かって良かったです。
 おじさんおばさんしかいない運動だから、すぐに関わろうってモチベーションは上がりませんが(若くてカワイイ男の子が多い方がいいに決まってるでしょう!)、街角で署名集めてたら、立ち止まって署名するでしょうね。

ジュネーブ4条約および第1、第2追加議定書についてはダンナが調べたらしいのでそちらもご覧下さい。

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Comments

 問題は戦争に関して「国際法」とか「国連」とかが無力だってことだよね。
 力による平和と非武装による平和の論点はそこだから、国際法や条約という論理上の後ろ盾、というのは、あまり意味がないんじゃないか、というのが、武装派の感覚なんだと思う。

 ようするに無法者に法は通用しないってこと。

Posted by: 大樹 | February 02, 2005 01:09

無法者に法が通用しない、と言ってるだけじゃなく、無法者をいかに囲い込んでいくか、無法者が法を遵守するインセンティヴをどうやって作り出すか。
それと、一般にはまるで認識されてませんが、非暴力も力の一つだってこと。非暴力は戦うんですよ、時には命がけで。非暴力抵抗は力の行使ですから。有効性の条件は様々ありますが。
 無防備地域を宣言してそれで安心、みたいな議論は私は抵抗あるんです。無法な占領、人権蹂躙に対する戦略を準備する必要がある。だから市民的防衛、社会的防衛の一環として位置づけることを考えた方がいいんじゃないかなと思うんですよね。

Posted by: らら美 | February 02, 2005 21:48

非暴力が戦うことだ、というのはそう理解しています。たとえば、「娘と話す 非暴力ってなに?」 (ジャック セムラン (著), 山本 淑子 (訳)  現代企画室) なんか読みました。

我々にとって、もうひとつの問題は平和というものの相対的な価値の問題ですね。たとえば、パレスチナの人たちは基本的に平和を全然望んでいないようなのですね。それを知ったとき、僕はかなりショックでした。世の中の人はほんとうは平和を望んでいるのだが、いまは、しかたなく争っているのだ、とそれまでの僕は理解していたのに、「平和」というのも所詮イデオロギーのひとつにすぎないのだ、ということを突きつけられてしまった。

彼らにとって大切なもの、重要なものは平和とは別にある。だから彼らには「平和」というわれわれの価値観は押しつけられない。
家族が死んで悲しい、というところまでは同じでも、それを拡張してだから平和を求めよう、という方向へ行くとは限らない。
家族が死ぬのは悲しいが、それはそれとしてやっぱり戦う、という人たちが現実にいる。
つまり、民衆のレベルから「望んで戦争している」という集団が現実に存在している。
彼らを平和に向かってモチベートできるのか、あるいは、それがはたして正しいのか。
平和が絶対の善ではない、と言い切られてしまうと、少なくともいまの僕はもう彼らを説得できない。

日本にいる僕としては自分たちのあり方として平和を求めたいが、世界に、望んで作る人たちの火種は常にあり、ときにその火の粉は飛んでくることがある。

Posted by: 大樹 | February 02, 2005 22:43

「パレスチナの人たちは基本的に平和を全然望んでいない」という言い方がどれほど正確なのか分か、パレスチナにどれほどの近さで接してそう感じられたのかも分かりませんが……パレスチナには、絶望した人々がかなりの割合でいるということは事実だろうな、と思います。でも彼らはもともと平和に暮らしてましたよ?きちがいじみた入植策で踏み躙られるまでは。
平和というのは、政治的自由や民主主義のような近代の概念とは違い伝統的な概念なので、ある程度文化的普遍性はあるんですよ(強調の度合いや優先順位の違いはあっても)。平和は、天なる栄光の地上での表現なので、平和が一番ではないにしても、平和が無価値である文化というのはかなり想定しにくい(平和よりも優先して名誉を守らなければならない、と外部に対して語る文化なんてのはありますが)。
ただ、そうやって人間の意志だか文化の違いだかに火種を求めることは、興味深いかも知れないけど……戦争は常に利権、経済の問題ですので、得をする奴が仕組むし、煽る、ということの方が、現実には大きな問題に思えるんですよね、私には。
それをどうやめさせるかという戦略を考える上で、少なくとも3つの側面から囲い込んでいくべきだ……ということは、前の記事で書いたなぁ。

Posted by: らら美 | February 03, 2005 22:49

 戦争は常に利権や経済の問題であるのは、たしかだと思う。その利権や経済が一部少数のものの場合、むしろ事態は簡単なのだけれど、集団の個々の構成員の本質的な利権である場合、絶望的に難しくなる。
 もともとはどうであったか、というのを別にして現在のパレスチナ問題に、「妥協して平和を求める」という選択が見えない。妥協か戦闘かと問えば、支配者でなく民衆レベルで「戦闘」が選択されてしまうわけだ。
 唯一確実に平和になる道は、どちらかが一方的に勝つ、片方がひとりもいなくなる、ということのように見える。
 つまり、この場合、「平和」とは、「皆殺し」の先にくるもの、ということになる。

 むろん僕はそれを肯定したくはない。
 けれど、現実の平和はなかなか優しくロマンチックなものでいてくれないみたいでもある。

Posted by: 大樹 | February 06, 2005 10:51

日本の国際化と平和に向けて無防備条例に積極的に参加してください。

 平和を遵守する為に、無防備条例しましょう。最近は有事法の制定で日本全体で軍靴の足音が聞こえています。平和な日本に自衛隊は必要ありません。無防備地域宣言条例を成立して、占領に無抵抗であれば、日本に真実の平和と安定を与えてくれる中国人民解放軍の人々が、強盗や従軍強姦・人民軍による無抵抗な市民殺人から、絶対に
平和を守ってくれるでしょう。皆様の一人一人の署名で、世界が平和で、全世界に尊敬される平和を目指して無防備条例都市が無事に人民解放軍に開放されることを目標にお願いします。

Posted by: 赤井 菜智 女子高校生 | February 15, 2005 14:50

>赤井菜痴さん
あははっ……やっぱり来たかぁって感じですね。
お名前もこっていて素敵。
頑張ってね。

Posted by: らら美 | February 15, 2005 15:28

自分はこの話を聞いて「はぁ?」としか思えませんでした。 
これは当該地域から自衛隊等の防衛力(軍事力)を排除しなければならなず、軍事的な「空白地帯」を設けることになります。
国の一部に軍事力を置けないとなれば国全体の軍事防衛戦略は頓挫してしまいます。
つまり「間接的な利敵行為」になりかねません。(しかもこの西宮氏には幹線国道通ってるそうで出動する自衛隊はさぞ困るでしょうな)

Posted by: 田舎 | March 04, 2005 22:15

無防備地域宣言をして戦闘に巻き込まれないなんていう絶対的なものはないし、現にそれを宣言しても戦闘に巻き込まれている。

それを勝手な解釈で条例化しようとしてる人って相当やばい人ですよね。まー人民解放軍でも北朝鮮軍が来ても海渡ってる最中に対艦ミサイルで撃沈ですから。

核使ったらどうなるか、よほどの馬鹿じゃないかぎり使わないでしょうし。

(内乱)
刑法第七十七条 国の統治機構を破壊し、又はその領土において国権を排除して権力を行使し、その他憲法に定める統治の基本秩序を壊乱することを目的として暴動をした者は、内乱の罪とし、次の区別に従って処断する。
 一 首謀者は、死刑又は無期禁錮に処する。
 二 謀議に参与し、又は群集を指揮した者は無期又は三年以上の禁錮に処し、その他諸般の職務に従事した者は一年以上十年以下の禁錮に処する。
 三 付和随行し、その他単に暴動に参加した者は、三年以下の禁錮に処する。
2 前項の罪の未遂は、罰する。ただし、同項第三号に規定する者については、この限りでない。
(予備及び陰謀)
刑法第七十八条 内乱の予備又は陰謀をした者は、一年以上十年以下の禁錮に処する。

(外患誘致)
刑法第八十一条
 外国と通謀して日本国に対し武力を行使させた者は、死刑に処する。
(外患援助)
刑法第八十二条 日本国に対して外国から武力の行使があったときに、これに加担して、その軍務に服し、その他これに軍事上の利益を与えた者は、死刑又は無期若しくは二年以上の懲役に処する。
(未遂罪)
刑法第八十七条 第八十一条及び第八十二条の罪の未遂は、罰する。
(予備及び陰謀)
刑法第八十八条 第八十一条又は第八十二条の罪の予備又は陰謀をした者は、一年以上十年以下の懲役に処する。

これに該当しそうな方、期待してますよ(笑)

Posted by: ニポーン | November 24, 2005 13:45

しかし国際法なんてものはいつでも破れるし、
破っても罰則がないか、あっても実質無理ですし。(どうやって「強制的に」国家を罰するのか)
ペナルティとしては国際的信用を失うというものがありますが、すでに信用されてない国には何の効果もありませんし。
北朝鮮やロシアが批准しているのもかの国が
そもそも守る気がなく。相手が守ってくれればラッキーって思っているか、無防備都市を装って武器弾薬を隠しておくというようなことにも使えそうですしね

Posted by: アンドロ | November 29, 2005 16:38

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