フォッグ・オブ・ウォー
今日は早起きして京都シネマへ。五百円引きの水曜日を待って、『フォッグ・オブ・ウォー(The Fog of War)』を見てきました。午前中からの一回だけ上映という、ミニシアターの中でもさらにマイナーな扱い。
キューバ危機やベトナム戦争当時の国防長官だったロバート・マクナマラのインタビューをまとめたドキュメンタリー映画。85才になったマクナマラが回想する冷戦時代の国際政治の現場、って感じの企画で、彼の言葉の中から教訓を数え上げる体裁に仕上げている。
確かにインタビューの内容は面白い。彼の人生は……20世紀のアメリカ人であるがゆえ当然のことながら……戦争と共にあり、キューバ危機以外では、常に「戦争を止められなかった」男なのだが(東京大空襲にも一役買っている!)、彼個人は自分の責任は認めない。たとえ国防長官であっても、「国民が選んだ大統領を補佐するのが」彼の仕事なのであって、戦争の責任は最終的には大統領にあると言い、枯れ葉剤の使用についても、それが違法だったなら絶対に許可などしなかった、としか言わない。第二次大戦中に従軍していたときに書いた、効率性を追求する分析報告書が東京大空襲の作戦立案に影響を及ぼしたかどうか聞かれても、言葉を濁す。彼の言葉は常に成功者の回顧録であり、強者の論理だ。国防長官時代を回顧して、「決して素直に質問に答えてはいけない。答えたい質問にだけ答えろ。これを実行した」と語るが、インタビューに対しても同じことを実行したということだ。その点で文学的価値は低い。
他に興味深かったのは、キューバ危機の時に核戦争も辞さずという強硬論を曲げなかったルメイ将軍についてのコメント。ルメイ将軍は、いずれ核戦争は避けられないと思っており、だからこそ有利なうちに仕掛けるべきだ、と考えていたのだ、とマクナマラは語った。同種の論理で動いている人たちは、今現在も多いんだろうなと思わされる。いずれ地球環境の破滅は避けられないのだから、今のうちに稼げるだけ稼いでおくべきだ……とかネ。
見ててずっと感じてたのは、これってジャーナリストみたいなおじさん人種が好きそうな、政治主導の歴史観にそった男の語り、男のストーリーだな……ってこと。政治こそ世界史の中心、これぞリアルな歴史の真実、みたいな無自覚さ。私はそんなふうに世界を見ないし、そんなふうに切り取られた世界なんか本物らしく見えない。
映画の企画意図そのものは、現在のアメリカの覇権主義に対して警鐘を鳴らすものになっているのだろうから、ケチをつける気はさらさら無いけれど。
映画のラスト、国防長官を辞任した(クビになった)あと、マクナマラが世界銀行で貧困問題やらに取り組んだ、という字幕が流れ、世銀で更なる悪行を重ねた……じゃないのかよ、と思い、ついついプッと吹き出して回りの注目を集めてしまいました。回りはシニアのご夫婦連れかシニアお一人が多かったです。
帰りがけに大丸によって、靴の修理を何足か済ませ、地下でハゲ天の野菜天丼を買って家に戻りました。野菜天丼と言いつつエビ天が入ってた……。
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