「無防備地域宣言」学習会
以前に非暴力で安全保障!その1、その2という記事を書きましたが、それと関係あるかな~と思って、「無防備地域宣言」学習会というのに行ってきました。@ラボール京都。講師は大阪経済法科大学の澤野義一先生。主催は「無防備地域をめざす京都府連絡会(準備会)」と「非核平和・戦争非協力都市条例の実現をめざす洛西の会」という……客層も含めて、平和運動にありがちな、若い子が一人もいない、年齢層の高い年季の入った活動家の方々の集まりって感じで。
でも話の中身は大変ためになる、面白いものでした。以下内容報告。
無防備地域(non-defended locality)というのは1977年に定められたジュネーブ条約追加第一議定書で規定されている概念で、別に共産国家に占領してもらいたがっている左翼(なんて今でも実在するのか?)が勝手にでっち上げたファンタジーではありません、念のため。
無防備地域を宣言すると、その地域への一切の武力攻撃が禁止されます。宣言は一方的に行うことができて、相手国には受領義務がある。
宣言のための条件は以下の4つ。
a) 戦闘要員、移動可能な兵器・軍用設備が撤去されていることこの中で非暴力オタクとして気になるのはc)。この「敵対行為」とは軍事的な敵対行為であって、非暴力的な抵抗・非協力は可能だというのが法学者たちの見解だそうです(自分で調べてないので澤野先生の言によれば、です)。
b) 固定の軍用施設・建物がある場合は、敵対目的に使用しないこと
c) 当局又は住民により、敵対行為がなされないこと
d) 軍事行動を支援する活動を行わないこと
国際法による「戦争の違法化」の流れはけっこう進んでるンですね。ジュネーブ条約追加議定書では、住民・民用物と、戦闘員・軍事的目標を区別して、攻撃を軍事目標に限定する義務が定められてるし、文化財・礼拝所への攻撃の禁止、自然環境の保護、ダムや原発への攻撃の禁止、なども定められています。
……でも、あれあれ?イラクではモスクも病院も爆撃されてたよねー。って、アメリカ、追加議定書批准してないじゃん。批准したら戦争犯罪で裁かれちゃうもんね。ってか、それを裁く国際刑事裁判所にも参加してないし。さすが国益を守る強いアメリカ。ロシアも中国も、北朝鮮だって批准してるっていうのに。
日本もやっと去年、追加議定書の批准に漕ぎ着けたばっかだそうです。恥。(外務省の「ジュネーヴ諸条約及び追加議定書の主な内容」のページ)
で、この無防備地域宣言、既に大阪市と枚方市で、署名を集めて住民からの直接請求という方法で、条例案が市議会にかけられたそうです。いずれも否決されたそうですが、「リベンジや~! もっぺんヤッたるでぇ~」と一部地域で盛り上がってるそうです。他に藤沢市と荒川区でも同様の運動が直接請求に漕ぎ着けたとかって。
京都でもこれをやってみようと運動を始めてる人たちが、今日の学習会を主催してるわけです。
有事法制、国民保護法など、ろくな説明もないまま小泉政権がばたばたと実現化し、改憲論も勢いづいているきな臭いこの頃。財界は武器輸出三原則の廃止を求め、「世界で競争に勝つ!」ことを目指してネオリベ路線まっしぐら。財界からの圧力のもと、自己責任の強調によって、これまで築いてきた福祉国家・平和国家としての国のカタチが根本から変容させられようとしています。自己責任で競争を煽り弱者を切り捨て、国民がぼろぼろバラバラになるのを、家族・共同体・愛国心とやらの保守的な価値で無理矢理カバーし、超監視・管理社会にしようというのが、この国のネオリベ政策の両面。
きょうび四条河原町でビラ捲きしてると、商店街の人とかいうのがすぐにやって来てやめろと言い、するとすぐに警官がワラワラとやって来て取り囲んでやめさせるそうです。三条河原町でも1時間もしないうちに、商店街の人→警官ワラワラというパターンが出来上がっているそう。商店街の人が進んで管理社会に協力するんでしょうね。左翼のビラ捲き、余程うざいんでしょう……ま、それは分かる気もするが、ここは民主国家なので、政治的見解を表明する権利は金科玉条のように大事にすべき筈なんですが。
……こういうご時世、地域レヴェルで運動を具体化することにはとても意味があると思います。
でもねー、運動の看板としては、「無防備地域」ってネーミング、良くないよなぁ。国際法上の用語だから仕方ないんだけど。でも、いかにも受け身でネガティヴ。無防備でいれば攻撃されない保証でもあるのか!って脊髄反射する人、絶対多い。いや、だからぬー、国際法で攻撃が禁止されてるの、って説明を聞いてもらわなきゃならない。それでもきっと、北朝鮮は批准してるのか、中国は、ロシアは、テロ攻撃はどうする、って畳みかけてくるでしょ。だからぬー、テロ攻撃はどっちみち防ぎようがないし、北朝鮮も中国もロシアも批准してて、批准してないのはアメリカ様なのね。
わたしとしては、市民的防衛・社会的防衛の議論を深めていく上で、国際法的裏付けがあるということが分かって良かったです。
おじさんおばさんしかいない運動だから、すぐに関わろうってモチベーションは上がりませんが(若くてカワイイ男の子が多い方がいいに決まってるでしょう!)、街角で署名集めてたら、立ち止まって署名するでしょうね。
ジュネーブ4条約および第1、第2追加議定書についてはダンナが調べたらしいのでそちらもご覧下さい。
Recent Comments