アマンドラ!希望の歌――非暴力シリーズ
昨日のことになりますが、『アマンドラ!希望の歌』という映画を見てきました。南アフリカで、アパルトヘイトに対する闘いの中で「歌」が果たした役割にスポットを当てたドキュメンタリー。
初っぱなからもう、心を揺さぶられるアフリカのリズム! 非人間的で残酷きわまる差別政策のもと、抑圧された人々は歌い続けた! アパルトヘイト政策の始まりの時から、抵抗運動の盛り上がりの時、萎縮の時、再生の時、若者が立ち上がる時、そして武力闘争が始まる「戦時」状態にも、それぞれの歌と踊りがあった。
『歌』はイデオロギーを押しつけることがない。人々は気に入らない歌詞を次々に替え歌にしながら、哀しみを共有したり、希望を呼び覚ましたり、闘う意味に共感を呼んだり、勇気を鼓舞したり……そうやって歌が人々を結びつけていった。それはとてもエモーショナルで理屈を越えたものだけれど、とても深いところから来ている――アフリカの大地から。映画の中で、インタビューを受けた音楽家や歌手、活動家や兵士たちの何人かの口から、we are spiritual people.という意味の言葉が出ていた。歌はアフリカのspiritualityを表現するのだろう。
南アの抵抗運動は必ずしも非暴力ではなかった。ANCには軍事部門が出来て、Freedom Fightersは文字通り軍事訓練を積んだ兵士たちだった。だが、映画の中でとても印象深かった言葉がある。「南アフリカの「革命」で、一番素晴らしかったのは……俺たちは革命のあとも白人を血祭りに上げなかったんだ」と、とても誇らしげに言っていた。この言葉は、武力を使用したかしないかという物質的次元ではなく、もっと精神的な次元で非暴力にさえ繋がるような希望を感じさせる。怒りと憎しみからではない、もっと違う源泉からの民衆の力があったからこそ「白人を血祭りに上げる」という悲劇を避け得たのでは……と感じさせられた。
もう一つだけ、印象深かった言葉。Hardest thing of exile is dream.国外追放されて何よりも辛いのは、夢なんだ。
彼は、夢の中では故郷にいて、故郷の人々に囲まれている。でも目を覚ますと異国の地にいる現実。故郷にいつ帰れるか、希望はほとんど無い。喪失を再確認させられる辛さが、とても胸に響いた。「革命」後、彼は故郷に帰ったはずだ。
映画の上映後、自らも南ア闘争に関わった峯陽一氏のお話があった。
この映画では、普通選挙が初めて実施された1994年以降のことが、おそらくわざと、一切描かれていない。アパルトヘイト撤廃後の南アフリカは、肌の色による差別政策はなくなり、警察による弾圧もなく、おそらく最も先進的な憲法を持つ国に生まれ変わった。その一方で貧富の格差は人種によらず顕在化し、犯罪に走る貧困層が増えて治安はひどい状態になったという。アパルトヘイトという悲惨なくびきを外し、ようやく、普通の「途上国の悲惨」に向き合い始めた南アフリカ。そこに生きる人々がもう一度この映画を通じて闘争の時代を見つめ返すことは、特別な意味を持っているに違いない。
そして……主催者側の上映意図がやや押しつけがましく感じられる場面もあったとはいえ、実際、ファルージャ攻撃のさなか、自衛隊を出している政府を持った私にとっても、思いを掻き立てられるものだった。
何しろ人々の力で社会が大きく変化する瞬間というのは、もうどうしようもなく胸ときめくものなのだ。
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