東欧の架空の国
『オルシニア国物語』A.K.ル・グィン ハヤカワ文庫SF
たぶん十年ぶりくらいの再読。……中身、全然覚えてなかった。若すぎたんでしょうね。今読めば、面白い。
東欧の架空の国オルシニアを舞台に、中世から東西冷戦期まで様々な時代に生きる人々を描いた短編集。作者デビュー前の作も含まれているとのこと。(この路線でデビューできなかったため、SFという「カテゴリーに合わせる」ことで出版の機会を獲得しようとした、と、本人の言葉が解説で引用されている)
大別すると中世もの、資本主義勃興期もの、東西冷戦期ものがあり、それぞれの作品の最後に、何年の出来事かが書いてある。冷戦下の東側で暮らしたことがあるのかと思うほど妙にリアルな冷戦期ものは、自由を描くには格好の素材だったのだろう。が、まさか20世紀の内に冷戦が終結するとは、SF界の女王にも予想できなかったのだろうなと思うと、それもまた感慨深い。
ル・グィンは知性が好きで何冊か読んでるんだけど、正直言うと、文体が合わない。省略されてる部分が分かりにくいのだ。長編でも「えっ、この文章で終わり??」と思うことが多い。最後の一文なんて絶対に必然のはずなのに、作者の考えるその必然性が飲み込めないことが、ままある。いや、だから嫌いじゃなくて好きなんだけど……読み方がいまいち分からないのだ。英語で読んだことないから翻訳の問題である可能性は消せないけど、訳者は複数いるし……それに、やはり複数の訳者で読んでも、英語で読んでも、ディネセンの文体はピタッと心にはまってくる。最初から最後まで、どの一文にも必然性を感じる。不思議なもんだなぁ。
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