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May 27, 2004

年金不払い運動の可能性

 一応わたし、非暴力が専門分野なんだが、久々に非暴力関連の本、『市民的不服従』寺島俊穂 風行社2004を読んでいて、ふと思った。

 年金の未払いも、市民的不服従としての可能性があったりは……ま、そんなことはないか。

 ソローが奴隷制やメキシコへの侵略に反対して人頭税の支払いを拒否したのは有名だが、彼の場合、個人的良心が悪法に従うことを拒否するという、個人レヴェルの行動だった。非暴力運動の出発点は、常に個人的良心だが、ガンジーによって集団としての市民的不服従が行われるようになり、政治的影響力としての効果が確認された。その後もアメリカの公民権運動などを通じて戦術は洗練されていった。

 非暴力による市民的不服従の条件は、
1.個人の良心を出発点とすること
2.具体的な法や制度に対する抗議であること(明確な獲得目標を定める)
3.目的に公益性があること(差別や貧困、戦争・紛争への抗議など、何か普遍的価値にリンクする)
というところだろうか。

 さらに有効な運用のために考えるべきポイントとしては、
a. 問題の所在を知らせるための象徴的行動を選ぶ
b. 覚悟と訓練のあるコアメンバーが必要
c. 運動の意味と目的を常に説明する姿勢
くらいは考えるべきかと。

 さて、年金不払いは個人の財布の具合や怠惰が出発点なので、1に当てはまらない。2は、現行の年金制度への抗議という意味もあるのでかろうじてセーフのように見えるが、どのような改善を求めるかは明らかでないので、やっぱりアウト。年金問題は公益性があるので3には当てはまるだろう。
 逆に言えば、こんなになる前に先手を打って、明確な獲得目標を定めて問題化し、その上で積極的な抗議として不払いを呼びかけちゃっとけば、市民的抵抗となり得たかも知れないってことで。市民的抵抗運動として未納が半分超えたら、これは政治を動かす力となったはず。
 似たような例で言えば、選挙の投票率の低さも、政治的な力となり得たかも知れない。ガンジーも投票ボイコットという手段を取ったことがあった。こっちはさらに微妙な考察が必要なトピックだけど。

 非暴力に対する一般の認識はいまだに低く、誤解も多い。
 非暴力は無抵抗主義じゃなく、積極的抵抗の手法。暴力的圧力に屈服しない覚悟と訓練が必要だ。
 なぜ非暴力か?といえば、それは誰の主張だって間違ってるかも知れないから。主張を暴力的に強制して社会を改革すると、主張そのものが間違っていたとき、取り返しのつかない傷を残す。だから非暴力は、「悪法を犯したからって投獄するというなら、いっそみんなで監獄をパンクさせよう」「暴力的に制圧するっていうなら、暴力で対抗せず、殴られよう(でもテレビカメラで撮っといてネ)」という発想で、相手に傷を残すよりむしろ苦難は自ら引き受ける。自らの主張の正当性への確信と、それが間違っている可能性を自覚することを両立させるのが、非暴力抵抗なのだ。
 そもそも非暴力というのは、人間にとっては理念としても絶対的ではあり得ない。人間は他の生き物を食って生きて行くものだし、まして小さい虫やバクテリアまで考えたら……無理無理。
 非暴力は、常に目指すべき規範として意味を持つ。絶対的真理を標榜せずに、絶えず不正を排除していく方向に働く点で、非暴力は動的な規範だ。未来に理想社会を設定してその実現のために現在を生きると、目的のために手段を正統化する誘惑が大きすぎる。暴力的仕組みを非暴力的なものに置き換えていくことを目指しつつ、現に非暴力を実行する場合、現在はむしろ未来を先取りして生きることとなる。この辺がミラクルでダイナミック。

 安全保障にも非暴力を適応していこうという研究も進んでるみたいだけど、その辺は追々フォローしていくつもりです。
 ……こういう話題だと、文体が安定しないね。

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Comments

はじめまして。Blog王決定戦の管理人をやっているものです。突然恐れ入ります。この度、5月16日よりブログ筆者を募集していまして、お邪魔させていただきました。ブログを拝見させていただき大変興味深い内容だったのでコメントを入れた次第です。私は個人で今回はじめてサイトを開設しましたので、何かと行き届かない所もあると思いますが、一度当サイトへ足を運んでいただけたら幸いです。もし、楽しそうだと思っていただけたら、ご登録の方、宜しくお願いします。本当に突然失礼致しました。

Posted by: Blog 王 決定戦 (REN) | May 30, 2004 at 16:59

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Tracked on July 09, 2004 at 10:01

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