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March 2004

March 29, 2004

佐々木淳子サン新刊『リュオン』

 でかい口たたいておきながら実はなつをさんのサイトを見るまで知らなくて遅くなりましたが、SFを描いてほしい描いてほしいと願っていた佐々木淳子さんの新刊『リュオン』(冬幻舎コミックス)、昨日買ってきて読み終わりました。

 ダークグリーンの後日談「リュオン」は、2002年に雑誌掲載されたとき読んでいましたが、さらにその後のリュオンが『那由他』のストーリーの古代世界へ、そして『ブレーメン5』の世界へと迷い込む2作の書き下ろしが読めます(嬉っ)。その他にも過去に雑誌掲載された単行本未収録の短編数本と、後書き漫画を含めて300ページを超える分厚さです。

 何しろ懐かしの面々に会えたことが、まずは嬉しいなぁって感じです。そしてショートショートながらも「最後の海」「モデル1」は、That's 佐々木SFのセンス!! 『Who!』を読んだときのドキドキを思い出しました。私としては『青い竜の谷』も大好きなので、後日談なり外伝なりが読めたらよかったのにという気持ちもありますけどね。

 ダークグリーンの続編 「リュオン 」は、破滅への因子の象徴であるゼルを倒すために戦った本編から時は経ち、ゼルをすべて倒すのではなく、調和の象徴であるフィーン・フィールドとバランスがとれるようになる日がいつか来ることを願う…という物語。とても納得できるものです。ただ、そのテーマの重さに見合う感動があったかというと…キャラへの懐かしさが先に立って、物語の感動(心を動かされる)という点では、やや薄いかなぁとも思います。本編が凄すぎたんだけどね。
 那由他の続編「ターン」は、三千年前のソズの時代。いびつな発展・繁栄を誇る文明への批判を込めた物語になっていて、読み応えがありました。本編ではほとんど描かれなかったターンという少年と、本編とはほとんど別人みたいに若いソズが中心に描かれているので、キャラに引っ張られずにお話を楽しめたのも良かったかもしれません。
 ブレーメン5の続編「ヒュウ」は、何しろ楽しそうなキャラたちのにぎやかなお話。ブレ5の世界はいつも、未来への希望とか自分たちで切り拓いていく意志とかが描かれているので、いわゆるSFの楽天性みたいなのが一番強いシリーズかなって思います。ヒュウのお祖父ちゃんらしき立派な黒豹が、本当にカッコ良く立派に描かれていて、半人半獣のヒュウの物語として素敵でした。

 ひねりのきいたショートストーリーやスケールの大きな長編を、またどんどん描いてほしいなーと、改めて思ってしまう作家さんです。

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