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September 2003

September 22, 2003

あなたは世界で何番目に金持ちか?

 日本でも所得格差が顕著化しているというニュースが流れましたが、勝ち組と負け組の貧富差がどんどん広がっているのは、日本にいてもそれなりに実感できるんじゃないでしょうか。
 んで、世界はもっとすごいことになってるわけです。
 世界で見ると、上位20%と下位20%の人々の所得の差は、1960年には30対1だったのが、1990年には倍の60対1に、その後7年で1997年には74対1にまで広がってます(国連人間開発報告書1999, p.3)。今後も広がってくわけで。……全体の差が広がるので、各層の内部でも差が広がっていくのですね。

 自分の年収をドルかポンドに換算して入力するだけで、あなたが世界で何番目に金持ちかわかるサイトがあります。グローバル・リッチ・リストです。Hot Wiredの関連記事はこちら
 自分の年収を入れてポチッとクリックすると、たぶん……自分が世界で上位数%に入る金持ちであることがわかるわけです。
 先進国と途上国じゃ物価も違うから単純に比べることはできないし、現金収入だけが豊かさの基準じゃないから、むしろ消費資源の量で比べた方がわかりやすいかな……と個人的には思いますが。それでも、具体的な数字が出てくるのはそれなりにショッキングです。

 「パンがないならケーキを食べればいいのに」というマリー・アントワネットのDQN発言を揶揄する人も、現代の貴族階級に自分がいるとまでは思わないのが普通じゃないかな。グローバル・リッチ・リストの主旨は、世界の貧富の格差を意識して欲しい、ってことなんだけど、結果を見て、「やっぱり日本は勝ち組」と安心する人もいるんだろうなぁ。少し前に流行った『世界がもし100人の村だったら』にも、同じ問題を感じた。これが一つ。
 もう一つは、貧富の差が「拡大し続ける」ルール作りが進んでいるってこと。経済のグローバル化の中で勝ち続けるのは、本当はどんどん少数に絞られていく。その他大勢の負け組に転落するのは簡単なこと。自分だけ勝ち抜けしようと誰もが争う社会が健全かどうか……弱肉強食はこの場合、必然ではなく押しつけられたルールだというところが肝心。WTOのことをちょっと調べればわかる。
 さらに最後の一つ。経済のグローバル化はすべてを「市場経済」に繰り込もうとするので、現金収入が少なくてもそれなりにハッピーに暮らしていくというやり方をどんどん難しくする。自給自足してた人たちに換金作物を作らせて買い叩いて、農薬と肥料を買うために借金した挙げ句に自給用の農地まで手放して都市に出て底辺労働者になる……ってのが貧困の一つのパターン。先進国でも公共サービスの民営化がこのまま進めば、金持ちはますます充実した教育・保健・安全を手に入れる一方、全体のサービスの質は落ちていくというのがパターン。

 つまりね……日本人は確かに今も金持ち。だけど、世界で起こっている貧富差の拡大は日本でも起こっている。この先も勝ち続ける人はどんどん少なくなり、子会社は親会社の言いなり、職人は切り捨てられパート労働が増える。すべてに値札がつく市場経済の中で続く泥沼の競争が行き着く未来では、勝ち抜けしたつもりの金持ち父さんだって安泰ではない。
 世界市場の中で値札のつかない領域を確保していかないと、冗談ごとではなく、お先真っ暗じゃないかしら。地域通過、マイクロクレジットから、産直運動やベランダ菜園まで、世界の中の自分の暮らしを考えないと!
 「私は勝ち組で良かった~」ではない世界への眼差しからしか、別の未来は拓けてこないと思うのだけど。

 そういえば、自民党の総裁選で、小泉以外の候補者たちが政策を論じたがってるのに、マスコミは政策より票読みや党内抗争ばっかり報じてた。小泉改革が弱肉強食志向だってことこそ論点だと思うんだけどなぁ。ま、もちろん、「弱肉強食」と「利権どっぷり」の二者択一では、選択肢があまりに貧しすぎる。私は政治にはまるで無関心なので、平和ボケらしく「総理はどんなに無能でも、せめて、せめてハト派がイイ!」というのが、小泉政権を経験しての感想。

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