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September 03, 2001

サボテンブラザース

 ばかばかしいB級映画なんだけど、妙につぼにはまって……好きなんだなー、こういうの。
 ジョン・ランディス監督、スティーブ・マーティン主演。
 実はテレビで見るのも、今日で3度目。DVDも出てるらしいけど、うっかりテレビで見ちゃうのが楽しいのね。場末の3本立てでもいい。

 ハデハデの衣装に身を包んだサボテン・ブラザースは、悪党を倒す正義のガンマン3人組……を演じる映画スター。ところが、彼らを「本物の正義の味方」と勘違いした美女に助けを求められて、悪党一味から村を救う羽目になり……
 詳しくはこちらをどうぞ。→こちら

 全編爆笑、徹頭徹尾「お約束」を逆手に取った作りで、分かっちゃいるけど笑わせられる、楽しいお話。悪乗りのやりすぎ具合が癖になる。

 私としては、字幕付きより、日本語吹き替えで見るのがお薦め。
 過去の「サボテン・シリーズ」の映画の題名がセリフの中にいろいろ出てくるんだけど、ポケモン・サボテン、サボテン失楽園、素晴らしきサボテン野郎、サボテンがいっぱい……など、一々パロディがはまってる。オリジナル音声で聞けば、きっと映画ファンには分かるパロディが沢山入ってるんだろうなと思う。
 いきなり「メキシコ 大正五年」なんて字幕が入ったりするのもいいセンス。なぜに大正!?

 この映画最大の謎は、「歌う木」と「透明人間」のエピソードだ。
 悪党一味のアジトへ向かうサボテン3人組、道順を記したメモに従って進むのだが、このメモをどこから入手したのか不明。
 だがそれはいいとしよう。シナリオ段階では理由があったのがカットされたのだろうと想像すれば気が済む。つじつま合わせに終始するより、見て面白いのが肝心なのだから。
 しかし……。
 「歌う木」のある場所で呪文を唱えながら空に向かって一人一発銃を撃つと「透明人間」が現れて案内してくれる……という、なんじゃそりゃ?な展開。
 いきなりファンタジー世界が闖入する摩訶不思議さを、まぁいいかぁ、と思わせてしまうルーズな悪乗りが愛しい。

 ストーリーテリングの観点から注目すべきは、この珍妙なファンタジーまがいのエピソードから、元々の作品世界(メキシコを舞台にしたガン・アクション・コメディ)への復帰の仕方だ。
 案内してくれるはずの透明人間を、サボテンの1人が誤って撃ち殺してしまう。ドサッと透明人間が岩場から堕ちてきて、地面に人型の凹みがつくのだ。透明な腕をとって脈をはかり、死亡を確認。その透明な腕が地面に落ちるとき、もう一度土埃がたつ芸の細かさだ。ここが珍妙ファンタジーのクライマックスとなっている。
 さて、案内者を亡くした3人が困っていると、頭上を一機の飛行機が飛んでいく。この飛行機はちゃんと伏線の張られた登場で、悪党一味のアジトへ向かうドイツ人たちが乗っている。3人は飛行機を追って、無事アジトへたどり着くのだ。
 この、透明人間の脈を取るナンセンスさから、飛行機の後を追うリアリティへの復帰が、実に鮮やかなのだ。
 ゴーッ、と頭上を飛行機が通り過ぎる速さで、ナンセンス・ファンタジーは過ぎ去り、リアリティが戻ってくる。
 明らかに作品世界から逸脱した「歌う木」と「透明人間」のエピソードを、何となく許せてしまう理由も、ここにある。観客を振り返らせない力業が、飛行機のゴーッ、なのだ。このトリッキーさはちょっと見習いたい。

 正義の味方という虚像を、図らずも現実で演じることになるサボテン・ブラザース。彼ら3人だけでなく、悪党になすすべなく蹂躙されていた村人たちも、自分の中の勇気を奮い起こしていくさまが、気楽なノリで気持ちよく描かれていて、ばかばかしいながらもカタルシス充分の楽しい映画です。

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