『星の牧場』庄野英二
少年ドラマシリーズのスペシャル版(単発)で、ドラマ化されてたんですね。脚本は別役実。5/27深夜に再放送してたのを見ました。
小学生の頃に読んで、すごい好きだった。でも、何となく読み返す機会がなかったんだけど……今回、多分3度目くらい、読み返してみました。
ドラマでは「里の人」と「山の人」は相補的な関係として描かれ、主人公も里に残るイメージで終わっていますが、原作の童話では、里の人の描写が少ない分、主人公は最後、里から旅立ってしまうイメージ。
物語は、戦争で記憶を失ったモミイチが、ずっと世話していた軍馬ツキスミの馬蹄の音を、幻聴のように聞きながら、牧場での暮らしから次第に山の中のジプシーたちの中へ、そして夜空の星々の牧場を翔るツキスミの世界へと、漂っていくお話。
小学生だった私が、何を理解してこのお話を好きになったのかといえば、ただただ、モミイチのツキスミへの思い。もういないツキスミの足音を聞き、水をのぞき込んだ拍子にツキスミの幻を見、振り向いてもいないその空白を抱えて、それでも淡々と生きているモミイチに感情移入して、最後にツキスミが彼を迎えに来たときには、ビョービョー泣いていたのを思い出します。
南方の戦線にいた作者が、戦いの悲惨さをいっさい描かず、ひたすらに美しい幻想を描いたこの作品の中に、「語れないこと」が隠されているように思えてなりません。
こんなにのんびりした展開の、文学的な作品が、童話として受け入れられてるって、いい時代だったのかな、なんて思ったり。
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